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これまでの研究

・地方自治体の環境政策、持続可能な開発目標(SDGs)関連施策の効果分析に関する研究

① SDGsを利用した地域活性化(2018~)

 SDGsは2015年に国連により提唱されたもので、17目標169ターゲットからなります。SDGsはすべての国々が2030年までに達成すべき目標であり、我々も無関心ではいられません。Think globally, act locallyという言葉あるように、目標の達成するための実際の行動は地域に委ねられています。SDGsでは地方自治体の施策にSDGsの目標を地域化(ローカライズ)することが重要であると示されていますが、具体的な実施方法は定められていません。

 そこで本研究では、神戸市の六甲山森林整備戦略を題材として、森林・植物管理のための施策がSDGsとどのように結びついているのかを分析しています。また、SDGsの文言を森林・植物管理に使いやすいように翻訳することで、地方自治体の政策決定者や地域住民が地域施策とSDGsとの関連性を分かりやすくするなどの検討も行っています。

② 環境未来都市構想の実施効果の分析(2019)

 政府は、地方自治体を対象として持続可能な都市の構築に係る様々な施策を実施しています。例えば、2008年~2014年にかけて環境未来都市構想(環境未来都市、環境モデル都市)が募集、選定されています。現在は、SDGs未来都市の募集、選定が行われています。本研究では、環境未来都市構想に選定された都市を対象に、同構想に選定されたことがこれら都市の持続可能性にどのように寄与したかを、環境・社会・経済の観点から分析しています。環境・社会・経済について14項目16指標を設定し、比較対象とする都市を設定しました。結果として、環境未来都市に選定されている都市は比較対象となった都市よりも各指標の達成率が高く、環境未来都市構造の理想像として機能していることがわかりました。一方、環境未来都市に選定されている都市は比較対象となった都市よりも各指標の達成率が低く、環境・社会・経済の価値を十分に創出できていないことがわかりました。

・超高齢社会の進展が環境・エネルギーに及ぼす影響の研究

① 高齢者とごみ分別の関係性の評価(2014~)

 日本の高齢化率(全人口に占める65歳以上人口の割合)は、2015年に26.7%に達しました(平成28年版高齢社会白書(2016))。高齢化率が21%を超えた社会を超高齢社会と呼びます。この定義に照らし合わせると、日本は2007年に、世界に先駆けて超高齢社会に入ったといえます。今後も高齢化率は上昇すると予想されています。超高齢社会の進展は、行政サービスなどに影響を及ぼすと予想されます。その1つが、ごみ処理施策です。認知機能や体力が衰えることで、高齢者が煩雑なごみ分別などの日常行動が十分に行えないケースが指摘されています。

 本研究では、神戸市における容器包装プラスチックごみ(以下、容リプラ)の分別を事例対象として、高齢者がどれだけ資源ごみとして分別できているか(以下、分別率)を、年齢階級・生活様式(単身世帯・複数世帯等)を考慮して調査しました。また、将来の人口推計結果を用いて、将来の容リプラ分別率の推計を行うとともに、容リプラ分別率の変化がごみ処理時のCO2排出に及ぼす影響を試算しました。これにより、超高齢社会にふさわしい自治体のごみ処理施策のあり方を考察しました。

② 家庭のエネルギー需要の把握(2015~)

 家庭部門での省エネ対策を検討する際には、先ず、建物形状(一戸建、集合住宅、断熱性能等)、世帯類型(世帯人数、世帯主年齢等)を考慮した、エネルギー消費量の把握が必要です。エネルギー消費量を推計する手法としては、トップダウンアプローチ(家庭部門全体でのエネルギー消費量を推計する)とボトムアップアプローチ(個々の家庭やグループでのエネルギー消費量を推計する)の2種類に分類され、それぞれ多くの研究事例があります。将来起こりうる問題を予測し、その回避策を事前に検討しておくためには、少子高齢化や人口減少が、エネルギー消費量や消費構造にどのような影響を及ぼすのかを事前に検討する必要があります。

 そこで、神戸市の家庭を対象として、エネルギーを使用する耐久消費財の使用時間と保有数量をもとに、世帯類型別のエネルギー消費原単位を作成しました。また、これを用いて神戸市の家庭部門におけるエネルギー消費量の将来推計を行いました。これを実施するため、本研究では、耐久消費財の保有数量と使用時間と統計資料を用い、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチを組み合わせたエネルギー消費量を推計しました。

 また、高齢者単独世帯や高齢者の貧困世帯が増加し続けている現状を踏まえて、これら世帯でのエネルギー利用料金が家計をどれだけ圧迫している可能性があるかを調査しています。

・木質バイオマスのエネルギー利活用に関する研究

① 間伐材の石炭火力発電所混焼の環境影響評価(2009~2010)

 和歌山県中部地域を対象として、間伐材の石炭火力発電所での混焼利用による環境負荷削減効果をライフサイクルアセスメント(LCA)により評価しました。対象地域における間伐材発生量は、スギ・ヒノキ植林分布および間伐材発生量等のデータより推計しました。評価では、対象地域における実証試験結果等のデータを用い,間伐から石炭混焼までの全プロセスにおけるインベントリデータを算出しました。また、間伐材の燃料加工方法として、乾燥チップ、ペレット,半炭化ブリケットを取り上げ、加工法の違いによる環境負荷量を比較し、間伐材の燃料化による環境負荷削減効果を明らかにするとともに、間伐プロセス、燃料化プロセスにおける改善点を論じました。

② 木質バイオマスエネルギーシステムの構築による既存エネルギーシステム転換の環境負荷削減効果の推計(2007~2009)

 岐阜県における木質ペレットの家庭での暖房利用を想定し、一般廃棄物処理事業との連携によるエネルギー利活用システムを提案しました。この際、バイオマスのエネルギー利活用システムを県内に導入した場合の環境負荷削減効果を、既存エネルギーシステムの転換効果も含めて試算しました。先ず、燃料製造から利用までに係るライフサイクル環境負荷排出量と県内の木質バイオマス発生場所や燃料需要先等の地理データを組み合わせ、直接的な環境負荷削減量を算出しました。次に、バイオマス燃料利用による経済波及に伴うエネルギーシステムの構造変化を環境負荷変化量として捉え、間接効果とした。これらを足し合わせ、エネルギー利活用に係る直接的・間接的な環境負荷排出量を試算しました。

・環境、経済、雇用の観点からみた再生可能エネルギー利活用の評価に関する研究

① 太陽光発電の推進と自然生態系の保全に関する研究(2018~)

 地球温暖化対策の観点から、再生可能エネルギーを推進することは極めて重要です。その一方で、太陽光発電が森林や荒れ地などの自然生態系を改変して設置されている事例があります。自然生態系が失われることで、森林の炭素吸収源の喪失や生物多様性の喪失などのマイナスの影響が生じます。また、例えば山の斜面の森林を伐採して設置された太陽光発電所において、豪雨災害で斜面崩壊により発電所も二次被害を受けるという事例も報告されています。そこで本研究では、太陽光発電を推進することによるプラスの影響と自然生態系の改変というマイナスの影響を定量化するとともに、これらを統合的に評価できる手法の開発を行っています。

② 木質バイオマスを利用した地域活性化に関する研究(2017~)

 2014年より国策として開始された地方創生は、地域に存在する資源(地域資源)を利用して産業や雇用の創出を行うことによる地域活性化を重要課題の一つとしています。但し、経済面だけが重要ではありません。地域資源を利用することで、環境面の改善はもちろんのこと、地域の魅力を上げ、地域住民の地域への愛着を向上させるような仕掛けも重要となってきます。そこで本研究では、神戸市に位置する六甲山の森林をエネルギー利用するビジネスを創出すると想定し、本ビジネスを通じて神戸市の地域活性化に繋げるための方法論を提案しています。具体的には、六甲山の森林間伐で発生する間伐材を温浴施設の熱源に利用すると仮定した場合に、地域住民や観光客の利用意向などをアンケート調査により尋ねるとともに、利用意向が六甲山への愛着とどのように関連しているかを分析したり、仮想価値評価法(CVM)を用いて利用意向を価値換算するなどを行っています。

③ 将来のバイオマス関連産業の就労人口とバイオマス生産量との関係性の分析(2013~2016)

 バイオマスの利活用は、地球温暖化対策、エネルギー確保等の観点から有望です。しかし、農林水産業の就労人口が減り続ける中で、将来的にバイオマスの生産量を十分に確保できない可能性があります。そこで、本研究では、農畜産系バイオマスを対象として、農業就労人口や就労者の年齢構成等の将来変化が農畜産系バイオマスの生産量に及ぼす影響を明らかにするとともに、バイオマス生産量を維持・拡大するための対策を提案しました。

④ 建設業から林業への人材移転の可能性の検討(2011~2015)

 本研究では、バイオマスのエネルギー利用を促進するための手段として、衰退産業からバイオマスエネルギー産業への人材移転を提唱するとともに、その方法論を提案しました。これを実施するため、廃棄物系・木質系バイオマスのエネルギーポテンシャルとCO2削減ポテンシャルの推計、人材移転を円滑に実施するための産業間スキルマッチングシステムの枠組みの開発、切捨間伐材を対象とした人材移転のケーススタディを行いました。

・自然災害に伴う災害廃棄物の発生と処理に関する研究

① 災害廃棄物の発生抑制の可能性の検討(2017~) 

 発生した災害廃棄物をできる限りリサイクルすることは重要です。しかし最も重要なのは、災害廃棄物の発生量が最小化される社会を構築することです。発生抑制の方法には大きく、ハード面の対策とソフト面の対策があります。前者は例えば、防潮堤の改修や家屋の耐震補強などを指します。本研究では、防潮堤を改修することで、災害廃棄物発生量や処理に伴うコストが劇的に削減できることをシミュレーションにより明らかにしています。後者は例えば、家庭の不要家財や空き家を減らすことで、発災時の災害廃棄物の量を減らすことを指します。本研究では、特に高齢者世帯を対象として不要家財の賦存量を明らかにするとともに、これら不要家財の削減方法を提案しています。

② 災害廃棄物発生量推計のためのストック原単位の作成(2014~) 

 災害廃棄物発生量は、単純に言えば、建物などの倒壊件数に発生原単位を乗じることで算出します。発生原単位は、過去の自然災害での実績値をもとに作成されることが一般的です。しかし、将来発生するであろう自然災害を対象として災害廃棄物を推計する場合、そもそも被害想定地域と過去の被災地とでは人口や建物件数などの条件が異なることなどの理由から、当てはまりが良くないといえます。逆に言えば、被害想定地域の建物構成(一戸建て、マンションなど)、延床面積、家具保有量などの情報が分かれば、これに建物、家具などのストック重量の原単位を乗じることで、自然災害が発生した場合の災害廃棄物発生量を推計することができます。

 そこで本研究では、ストック別の重量原単位(ストック原単位)を作成しています。これまでに、家具、自動車、電化製品などの家財、太陽光発電パネルなどの原単位を作成しました。また、2階建て以上の一戸建ての場合、家財が1階部分と2階以上部分のどこにどれだけ設置されているかも明らかにしています。これにより、例えば床上浸水で1階が水に浸かり、1階部分の家財がだめになったとしても、2階部分の家財は生き残るというシナリオでの災害廃棄物発生量を推計できます。

③ 災害廃棄物の処理・リサイクルシステムの構築(2014~2016) 

 本研究では、地震等の災害発生に伴う人工資本(公共施設、設備等)・自然資本(土壌資源、森林資源等)のロストストックの発生予測を行うとともに、これに伴い発生する災害廃棄物の自区内処理や広域処理を通じた処理・リサイクルシステムの構築による具体的な災害廃棄物処理対策を提案することを目的としています。特に、南海トラフ巨大地震の被害想定地域を事例として、本研究課題で提案した方法論の適用を行います。また、地域の人口やストック蓄積量の将来変化を考慮して、発災時期の違いによる災害廃棄物発生量の変化やそれを踏まえた処理方法も合わせて検討します。以上の検討を通じて、政府や地方公共団体の災害廃棄物処理対策について、事前の災害廃棄物発生予測や処理・リサイクル体制の構築の面から貢献することを目指しています。

※本研究課題は、環境省環境研究総合推進費補助金(2014年度~2016年度)の助成のもと実施されました。

研究課題名:「震災に伴う人工資本・自然資本ストックの損失と対策の評価」

課題成果報告はこちら、研究成果報告書はこちらから御覧ください。

・ごみ処理システムの構築に関する研究

① 再生可能エネルギー拠点としてのごみ焼却施設の可能性の検討(2010~2016)

 焼却施設は、廃棄物処理の中で最も温室効果ガスが排出される処理施設です。一方で、焼却施設ではゴミ焼却排熱を利用したごみ発電や熱利用が可能であり、これを利用することで、社会全体における温室効果ガスの削減に繋げることができます。本研究では、再生可能エネルギー供給拠点としてのごみ焼却施設の可能性を検討するため、ライフサイクルアセスメント(LCA)を用いた焼却施設の温室効果ガス排出量の推計、ごみ発電や熱利用による温室効果ガスの削減度合いを評価しました。

 

② 実データを用いたごみ処理システムの環境影響の把握(2007~2008)

 本研究では、岩手県県央地域を対象として、本地域で稼働する処理施設の実データ、ごみ細組成データの実験結果をもとに、ライフサイクルアセスメント(LCA)を用いて廃棄物処理に係る環境影響や処理コストを推計しました。また、将来のごみ処理変化や施設の耐用年数を考慮して、環境影響や処理コストが最小化可能なごみ処理システムの構築方法を検討しました。

・ごみ排出抑制に対する消費者意識に関する研究

① ごみ排出抑制に対する消費者意識の検討(2012~2013)

 本研究では、3Rの中でも最重要であるごみの排出抑制に着目し、消費者が、食品用PSトレイの排出抑制に対してどれだけの受容性を持っているかを、アンケート調査により調査、分析しました。また、神戸市で食品用PSトレイの排出抑制が実施された場合に、どれだけのCO2削減効果が見込めるのかを試算しました。

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